正しい知識でコロナ対策(消毒・殺菌・除菌)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症対策に使用される消毒液や殺菌・除菌剤についての基礎知識を纏めています。情報源は政府発表資料など確かなものに基づいていますので是非ご参考下さい。

【誤解を防ぐための基礎知識】

正しく知ろう、消毒、滅菌、殺菌、除菌の表記違い
無毒化する消毒、絶対量を減らす滅菌、どちらを使うべきか
消毒、99%殺菌、99%除菌、優良誤認を狙った曖昧表記
同成分を同量含有しているのに表記が違う理由
医薬品、医薬部外品の許認可で変わること、変わらないこと
天然成分表記に騙されない、SDSで見抜く真の安全性
信用できる製品、できない製品

☞ 正しく知ろう、消毒、滅菌、殺菌、除菌の表記違い

日本石鹸洗剤工業会用語集によると、消毒とは病原性の微生物を死滅または除去することで感染力や毒性を低下させ、無害化できるものをいいます。また、滅菌は病原性に関わらず、全微生物を100万分の1以下まで死滅させるものをいいます。一方、殺菌は微生物を死滅させるという意味で、除菌は微生物を除去するという意味で同じですが、微生物の無害化や、規定水準以下まで死滅・除去できることを保証していない点に注意が必要です。
消毒、滅菌、殺菌、除菌の定義

☞ 無毒化する消毒、絶対量を減らす滅菌、どちらを使うべきか

病原性の有無を問わず微生物をほぼ全て死滅させるので、無菌状態を作り出したいのであれば滅菌表記の製品を使うことになります。無菌状態にできれば新型コロナウイルスに感染する可能性はなくなりますが、無菌状態にできるということは人体にとって有害な成分を高濃度または、複数使用しているという意味にもなりますので、滅菌表記の製品は人体(手指、肌など)ではなく物体(装置、器具など)に使用するものと考えて下さい。
滅菌剤の使い方

☞ 消毒、99%殺菌、99%除菌、優良誤認を狙った曖昧表記

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ノンアルコールを謳った消毒液なども多数販売されるようになりました。定義上、消毒は無害化を保証していますが全ての病原性微生物の無害化までは保証していません。同様に、殺菌や除菌についてもどの微生物を死滅・除去するかを保証していません。つまり、消毒表記だから良い、99%殺菌、99%除菌表記だから良いというものではなく、対象の病原性微生物(新型コロナウイルス)に有効な成分が死滅・除去できる濃度で含有されているかが感染症対策として重要になります。
病原性微生物、ウイルスへの有効性

☞ 同じ成分を同じ量含有しているのに表記が違う理由

消毒および、殺菌表記は薬基法(旧薬事法)に基づき、医薬品または、医薬部外品にのみ認められる表記となります。例えば、内容成分と含有率が完全に一致している二種の製品がある場合、医薬品の製造販売手順に従って医薬品または、医薬部外品としての許認可を得ていれば消毒または、殺菌表記に、許認可を得ていなければ雑貨品扱いとなり、除菌表記となります。
表記が異なる理由

☞ 医薬品、医薬部外品の許認可で変わること、変わらないこと

全ての内容成分と含有率が同じであれば、消毒・殺菌表記の製品と除菌表記の製品は化学的安全性・危険性も同じであり、製品として人体への安全性を公的機関(厚生労働省など)が保証しているか否かの違いのみとなります。
では、なぜ許認可を取らない除菌表記の製品が販売されているのか。特にアルコール製品でこの手の疑問が沸くと思いますが、アルコール(エタノール、イソプロパノールなど)は非常に洗浄力が高く、強力な洗浄剤として工作機械や工場の床などの清掃に使用されます。つまり、工業用途のアルコール製品は人体への使用を目的としていないので許認可を得る理由がなく、許認可を得るための追加コストも必要ありません。その結果、低コストで強力な洗浄剤(除菌は副次効果)の提供が可能となります。これが許認可を取らず、除菌表記のアルコール製品が販売され続けている最大の理由です。
雑菌剤のメリット

☞ 天然成分表記に騙されない、SDSで見抜く真の安全性

例えば、柑橘類に多く含まれるクエン酸や食品添加物として使用される乳酸、これらは確かに天然成分ですが、化学物質情報となるSDS(安全データシート)では眼刺激性や皮膚腐食性が示されています。従って、天然成分のみを原料としていても肌荒れや皮膚の炎症を引き起こさない保証はありません。故に、人体への安全性を最優先される場合、製品ラベルや製品紹介などの文面で判断せず、医薬品または、医薬部外品といった厚生労働省などの公的機関が安全性を保証している製品の使用を推奨します。
SDSサンプル

☞ 信用できる製品、できない製品

SDSは化学物質を製造、輸入する事業者が使用者および、消費者の安全を確保するために作成・配布するものとして、平成12年4月から労働安全衛生法において提供が義務化されています。免疫力の弱い乳幼児を新型コロナウイルスの感染から安全に守りたい、その心理に付け込むような成分的に根拠のない製品は勿論ですが、安全性を大々的に打ち出している製品もその安全性に根拠があるのか、SDSを取り寄せて確認するなど十分注意しましょう。万が一、対象製品のSDS提出を拒まれたり、渋られるようなことがあれば「消費者に知られたくない不都合な真実が記載されている」と考え、使用の中止を検討してみて下さい。
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